eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)や楽天VTのリスク
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)」は、世界中の株式に分散投資することを可能としたインデックスファンドです。
先進国、新興国の株式にまとめて投資できる大変便利な代物です。
ですが、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」を買ったからといって、安心して長期投資ができるわけではありません。
新興国のリターンを取り入れることで、リスクだけが高まってしまう側面があるからです。
ここでは「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」が抱えるリスクについて考えてみました。
- eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)や楽天VTを買うべき人は?
- 新興国株式がeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の足を引っ張る
- 世界の株式への投資はリスク分散にならず、新興国株がそのリスクを拡大する
- 世界中に「分散投資されてしまう」リスクを許容できるか
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)や楽天VTを買うべき人は?
数多のインデックスファンドの中から「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」を選ぶ理由って何でしょうか?
こんなところだと思います。
①とりあえずインデックス投資を始めたい
「インデックス投資を始めたいけど、何を買うのか考えるのは面倒だ」
②世界経済全体の成長に期待したい
「中国やインドとかこれから発展するでしょう。世界中の国に投資しておいた方が儲かりそう!」
③リスクを分散させたい
「特定の国に集中投資すると何かあった時が不安。もっとリスクを分散させたい。」
この中で「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を買うのに適しているのは、①のパターンだけです。
「どの国に投資すべき?」
「どの銘柄を買うのが正解?」
といった、投資方針の検討に時間を割きたくない場合です。
この場合、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」の購入は最適解の一つです。
これだけで全世界の株式に投資し、株式の時価総額に応じて勝手にリバランスしてくれるのでお手軽です。
しかし、②のようにより大きな利益を狙いたい場合、③のようにリスク分散を考えたい場合、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」ではその期待に沿うことはできません。
これらのファンドの10%は新興国の株式で構成されています。
この新興国株式のリターンが長期的な成長を妨げ、株価下落時のリスクをより大きいものにしてしまうからです。
新興国株式がeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の足を引っ張る
新興国の株式は、高リスクと引き換えに高いリターンをもたらすと思われがちです。
たしかに株価が上がる時は、先進国の株式より大きく上がります。
問題は株価が上がる期間です。
■先進国と新興国の株価の推移
これは先進国と新興国の株価の動きを比較したものです。
青は先進国に投資するETF「iShares MSCI Kokusai ETF」のチャート。
赤は新興国に投資するETF「VWO」のチャートです。
2009年のリーマンショック以降、先進国は右肩上がりの上昇を続けています。
それに対し、新興国はどうでしょう?
リーマンショック直後や2016年、2017年頃のように大きく上昇している時期もありますが、その上昇が長続きせず、一定の範囲内を上下しています。
このような値動きをしている新興国株式を何年間も積み立てても、思うようなリターンは得られないです。
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」には、この新興国株式が10%も含まれています。
90%の先進国の株価が右肩上がりに上昇しても、残り10%の新興国の株価が足を引っ張り、リターンを低くしてしまいます。
世界の株式への投資はリスク分散にならず、新興国株がそのリスクを拡大する
また、世界の株式への投資はリスクの分散にはなりません。
先程のチャートを見ても分かると思いますが、先進国も新興国も株価が下がる時は一緒に下がることが多いです。
これは先進国の株式と他の資産クラスの相関係数です。
相関係数は値動きの類似性を示す指標です。
似た値動きをするほど「+1」に近づき、逆の値動きをするほど「-1」に近づきます。
先進国株式と新興国株式の相関係数は0.87と+1に近い値です。
つまり、先進国と新興国の株価は同じ方向に動くことが多いということです。
同じ値動きをする資産に分散投資しても、リスク分散の効果は期待できません。
それに加えて、新興国株は世界経済が不況に陥ると、市場からすぐに資金が引き揚げられてしまい、先進国の株価よりも下落幅が大きくなりがちです。
新興国の株価は先進国と一緒に、先進国より大きく下がるのです。
そんなリスク満載の新興国株が10%も入っている「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」は、決してリスクが低いファンドではありません。
世界中に「分散投資されてしまう」リスクを許容できるか
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」の新興国株式比率:10%は、もたらされるリターンよりリスクの方が大きい気がします。
私は新興国への投資は5~6%程度でいいかなと考えています。
長期にわたって投資をするなら、右肩上がりに安定した成長を続けている先進国株式をメインとすべきだと思うからです。
だから、私にとって「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」は
世界中に分散投資できる
ではなく
新興国に10%も分散投資されてしまう
と言うマイナスの側面が強いです。
世界全体に分散投資するなら、新興国は新興国だけに投資するインデックスファンドを個別に買って、比率を小さくした方が安心して投資できると思います。
逆に新興国10%のリスクは許容できるし、新興国の未来の株価上昇に期待したいという人にとっては、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」は良い投資先になるのではないでしょうか。
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「楽天VT」を買う時は、新興国10%の比率を許容できるかという点を考えた方がいいと思います。
他の記事の紹介です。
フィデリティ証券のレポートでは米国株の比率を70%にすると、リターンとリスクのバランスが取れるようです。
リスクを抑えた分散投資をするには、株式と違う値動きをする資産に資金を分散させる必要があります。
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