インデックスファンドはコストだけで選んではいけない
何かとコストが注目されがちなインデックスファンドですが、本当に重要なのはコストではありません。
大切なのは運用成績をベンチマークとなるインデックスに、どれだけ近づけられるかです。
コストはそれを達成するために必要な条件であり、必ずしも最重要事項ではないのです。
インデックスファンドで重要なのはベンチマークとのかい離
例えば、S&P500をベンチマークとするインデックスファンドが2つあったとします。
仮にA、Bとしておきましょう。
Aの信託報酬は0.2%、Bの信託報酬は0.3%と、Aの方が低コストです。
ある年の年間リターンはAが10%、Bは6%でした。
ベンチマークであるS&P500のリターンは7%です。
さて、この2つのうちどちらを選ぶべきでしょうか?
「Aの方が低コストでリターンも良いのだから、Aを選ぶべき!」
そう考える人もいるかもしれません。
ですが、それはアクティブファンドの選び方であり、インデックスファンドの選び方としては間違っています。
インデックスファンドはベンチマークとする株式指数にパフォーマンスを連動させることで、市場平均並みのリターンを確実に得ることが目的です。
先の例では、Bはベンチマークから1%の下振れに対し、Aは3%も上振れしています。
インデックスファンドとして運用しているのに3%も上振れするということは、次の年はベンチマークより3%パフォーマンスが悪くなる可能性もあるということです。
Aはコストは低く抑えていますが、インデックスファンドとしての運用能力に疑問符が付きます。
逆にBは少しコストは高いですが、運用能力は優れていると言えます。
私たちは少しばかりコストが高くても、ベンチマークにリターンを近づけているBの方を選ぶべきです。
このように、インデックスファンドを評価するには、信託報酬等のコストを見るだけでは不充分です。
ベンチマークとのかい離率からそのファンドの運用能力をチェックする必要があります。
ベンチマークとのかい離が低いインデックスファンドは?
ベンチマークとのかい離率は運用報告書でチェックすることができます。
月報でもファンドとベンチマークの騰落率の比較が掲載されています。
インデックスファンドを選ぶ際は、これらをチェックして優れた運用実績があるファンドを探すのが良いでしょう。
参考までに、代表的なインデックスファンドのベンチマークとのかい離率を掲載します。
月報から直近1年のかい離率を調べました。
米国株式のインデックスファンド
米国株に投資するインデックスファンドではeMAXIS Slim米国株式(S&P500)が、ベンチマークとの差異を0.1%に抑えていて優秀です。
iFree S&P500、iFree NYダウ、たわらノーロードNYダウはベンチマークとのかい離が大きく見えますが、これは配当無しのS&P500やNYダウと比較しているためです。
インデックスファンドのリターンには株式の配当金も含まれるので、配当無しの指数と比較すれば差が大きくなります。
配当無しの指数と比較されても、そのファンドのパフォーマンスが本当にベンチマークに近づけているのか良く分かりません。
配当込みの指数と比較しているファンドを選んだ方がよいでしょう。
その点、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は配当込みのS&P500と比較してくれています。
先進国株式のインデックスファンド
先進国株式に投資するインデックスファンドは、eMAXIS Slim先進国株式とニッセイ外国株式がベンチマークとのかい離が低いです。
たわらノーロード先進国株式は先日、信託報酬をeMAXIS Slim先進国株式やニッセイ外国株式と同程度に引き下げましたが、ベンチマークとの差が少し大きいです。
コストだけでなくベンチマークとの差も小さくできるか注目です。
新興国株式のインデックスファンド
新興国に投資するインデックスファンド。ここでもeMAXIS Slim新興国株式はベンチマークとの差を小さく抑えています。
一方でSBI・新興国株式インデックスは、コストはeMAXIS Slimより低いですが、ベンチマークとの差が大きいです。
コストだけに着目するとSBI・新興国株式を選ぶことになりますが、インデックスファンドとしての運用の確実さを考えると、eMAXIS Slim新興国株式を選んだ方が良いです。
インデックスファンドの購入はベンチマークとのかい離率をチェックしてから
こうして見ると、低コストなインデックスファンドはベンチマークとの差が小さい傾向にあります。
コストが大きくなればなるほど、株価以外の要素が運用成績に影響することになり、ベンチマークに近づける運用が難しくなるためでしょうか。
だから、インデックスファンドを選ぶにあたって、コストが重要な要素であることは疑いようもありません。
しかし、中には信託報酬は低いけどベンチマークとのかい離が大きいファンドもあります。
そういったファンドは、インデックスファンドとして優れているのか疑わしいので、避けておくべきでしょう。
いくら信託報酬が低くても、ベンチマークに近づけないインデックスファンドは購入するに値しません。
時々、インデックスファンドの信託報酬引き下げや、業界最低コストのファンドの登場が話題となりますが、購入する前にベンチマークとのかい離率をチェックすべきです。
特に新規発売のインデックスファンドは要注意ですね。
いくら信託報酬を安く設定しても、ベンチマークに近づけるかは運用してみないことには分かりません。
最低でも運用開始から1年が経過するまでは、購入を待った方がいいと思います。
他の記事の紹介です。
業界最低コストの信託報酬で運用を開始した「SBI・バンガード・S&P500・インデックスファンド」。
信託報酬以外のコストやベンチマークとの差異が判明するまでは購入を待った方が良いと思います。
「たわらノーロード先進国株式」は実質コストではeMAXIS Slim先進国やニッセイ外国株式を下回る可能性があります。
そのコストの低さをベンチマークとのかい離率の軽減につなげられるか注目です。
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